悲しみの700人の参列
本日はよろしくお願い致します
担当の方へのあいさつとともに
担当から
今日はもし、会葬の方に顔を見たいといわれても
お断りしてください
といわれた
・・・・・・・・・・・・
喪主も話ができない状態なので、話は全てお姉さんにしてください。・・・・・と
冷ややかなこのなんともいえない空気は
そうゆうことか・・・・誰もが口をつぼんだ
そこへふらふらと、ベレー帽をかぶった細身の背の高い女性が向こうからゆっくりとやってきた
目がうつろである
そのままふらふらとお棺に近寄った
ぱぱ・・・・なんでこんなとこにいるのよ・・・と笑っている
ぱぱ・・・ぱぱ・・・・
背の高い男女がその女性に駆け寄っていく
そして肩を抱き、大きな声で泣き出した
おかあさん!・・・どうやら喪主の奥様とふたりの子どものようである
倒れそうに見えた私は、スッと奥様の近くまで進んでいった
奥様は私に気づき、しばらくぼんやりしていたが、にこっと微笑んだ
私もにこっとして
おそばに下ります・・・そういった
奥様は、又にこっとしてありがとう・・・・といった
奥様は涙も出ないようだ・・・
そのまま式場にずっと座っていたいと言った
開式が近づき、私は火入れの準備に取り掛かった
お棺のふたを閉めようとそばに行ってドキッとした
全身包帯でグルグルまきである
葬儀は淡々と行われ時間は過ぎていった
なんとも若い会葬者の山である
それもそのはず
故人は47歳
子どもは高校生と中学生なのだから・・・
最初から最後まで泣き声が響き渡っていた・・・・
次の日はなぜか明るく見える奥様の声が・・・・
おはようございます
本日もよろしくお願い致します
よろしくお願いします・・・といいながら出てきた奥様を見て
私はぎょっとした
奥様はベレー帽を脱いでいて・・・・
でもその下の額の上は20センチほどの
縫いあとが・・・・・そして髪の毛は無かった
ああ~・・・・
夫婦ふたり・・・火災の中 だんな様は全身を焼かれ奥様は・・・・
ふたりの子どもが学校から帰ると、家はほとんど焼かれていたそうである
泣き崩れる母親と顔さえもわからないほど焼かれた父・・・
どうしてこんなことが起こるのだろう
告別式が終わり、お別れは無かった
棺のふたを再び開けることはもう無かった
そして、火葬等への移動
私は奥様にへばりついていた
心配だった
涙も一度も流していない奥様がとても心配だった
こうゆう場合、お棺がお釜に入る瞬間
はじめてわれに返ったように泣きじゃくってお釜に飛び込んでいく方もいる
やはり奥様は
まって!ふたを開けて
と言った
でも、担当はできないと言って断った
え!なに・・・できないって・・・・
なんで・・・・だんな様がもう焼かれてしまうのに
何で・・あわせてあげないの・・・・
私は急に怒りをおぼえ、涙が止まらなくなっていた
奥様が涙を流し・・ぼ~っとしている間に棺は釜に入っていった
ばった~ん
釜のしまる音ではっとしたように奥様は
パパ・・・・パパ・・・・パパ・・・・小さな声で・・・・何度も言っていた
パパ・・・ごめんね・・・・ごめんね
なんともやりきれない
私は奥様を抱きかかえるようにお部屋に連れて行った
ご収骨までどうぞ、こちらでお休み下さい
抜け殻のような奥様を、やさしい子どもたちが寄り添ってくれている
只今お部屋に入りました
収コツ時間は1時間だそうです
私は担当に伝えたが、実際担当と口も聞きたくなかった
担当はお別れもないし時間が余ってどうしようかと思ったよ・・・と言った
とても優しい顔をしたやさしい担当だと思っていたが
人の気持ちを考えてあげれない悲しい人なんだと思った
色々な葬儀がある
でも、担当にしたら毎日の業務かもしれない
でも、もし業務何だとしたら
この仕事をやめてほしい
一つ一つ大事な葬儀である
私は事務のようにこなす人はこの仕事をやめてほしい
いつもそうおもう
一つ一つ 大切に やさしく ご遺族をいたわってあげたい
私たちができる最大限 癒してあげたいと
私はいつも思う
そして私は
そう考えながら 心の対応をしている自分が大好きである
心からありがとうと言ってもらえることが
私たちセレモニーレディの生きがい・やりがいなのだから